竹が織りなす巧みの技、日本の伝統を伝える美

創作工房 中野竹藝

創作工房 中野竹藝は、明治の終わり頃から竹細工をやっていました。
お店は赤瓦がオープンした時からなので、もう20年以上になります。

今までは製造販売でも、作るばかりのことが多かったですね。
昔は問屋さんや竹材関係もありましたので、そこに卸していました。
今はやめておられるところも多いですが、建築関係も多かったです。
窓、欄間など、京都や大阪の問屋さんからの要望に応じて作っていました。

竹細工はデザインして作っていますので、新しい商品を作るのはなかなか難しいです。
材料は竹ですが、職人の手間賃というか、努力を価格に転嫁する際の設定具合に結構悩みます。
特にここは観光客も多く、お土産屋さんの色も濃い場所ですから、いろんな方に買っていただける価格設定にして、それに合わせて作品作りをしています。
全てオリジナルですので、デザインから竹の仕入れ、加工するまで、多くの手間がかかっています。

安くて普段使いできる商品を考えていかないといけませんが、品質に妥協はしたくありません。
ちょっと他ではできない、うち独特の技術を使って加工している竹細工もあります。
竹細工も今は珍しくなって、特別なものになっているのかもしれません。
ですから、そういった価値に共感してもらえる方に買っていただけるのだと思います。

芸術作品のような作品展の場合は、一生懸命に手間暇を惜しまず作品作りを行い、価格に転嫁する、それでもいいんです。
でも商売として買っていただくとなると別です。何が難しいって、そこが一番難しいです。
どこの業界でも難しいと思いますが、特にうちなんかは珍しい仕事だからなのか、なかなか認識してもらえないですね。

うちは独自で開発した技術で竹細工をしています。世界でも珍しい「丸竹加工」で、竹を割らずに丸のままで曲げたり矯正したりして、組み合せることで作品を作っています。
竹はしならせるのも難しい材料で、それをこうやって丸くするには、非常に難しい技術なんです。

竹を曲げたり反らしたりして、全部竹で表現しています。
例えば、こう曲げても、ふわーっと戻ってしまいます。意図した形に、ビシッと納めるのが大変なんです。
説明しないと、その技術がわからないですし、お客さんも値段ばかりみて判断され、ひどく悲しい思いも今までしてきました。涙がこぼれそうな時もありましたね。

竹は自然のものですから、割れたりヒビが入ったりします。
これは竹ですから、割れても当たり前なんですが、割れたら「不良品」だと言われてしまいます。
そのため、しばらく乾燥させるために「寝かせます」。
切った竹はすぐに使いません、何年も立てておいて古い方から使います。
そうしないと、部屋に置いた時に冷暖房の影響で割れてしまいます。

竹は一本ずつ形や太さ、硬さや節の数も違います。同じものは一つとしてありません。
職人仕事なので、同じデザインでも仕上がりが少しずつ違っていて、そこに風合いもあります。
自然の材料ですから、世界にひとつだけのオンリーワンです。

一番大変なのは、材料が段々手に入らなくなってきたことです。 普通の孟宗竹のような青竹ではなく、鳳尾竹(ほうびちく:中国山地に古くから自生していた)という竹を使っています。
また個人の方が所有する近隣の山へ許可もらい、真竹を調達しています。

しかし、煤竹(すすだけ)は、もう入手することができません。
昔は茅葺屋根の家には当然のように囲炉裏があって、その天井に竹が張られていました。
囲炉裏の火で天井が煤けていき、煤けた天井から取った竹が「煤竹」です。
三百年くらいたたないと、いい色合いにならないと言われています。
茅葺屋根の家を建て替えが多かった時代は入手できましたが、今はもう絶対に入ってこないです。


何十年も前になりますが、煤竹を入手するために全国を走り回っていました。
茅葺屋根の家を建て替えると聞けば「煤竹残しておいてください!」と頼んでいました。
年に一回は、大きなトラックの荷台いっぱいに積んで帰ってくるんです。
取り壊した家がお金になるので、快く売ってもらえました。
しかし、年々その煤竹を積んで帰る量が少なくなっていきました。
今は当時の材料を残していて、限られた作品だけに使っています。

この竹製品に対して、お客さんの認識度が低い。それだけ身近ではないということだと思います。
初めて見られる方も多いですし、そこがやっぱり難しい商売です。
値段がいちばんネックです。
手仕事で商品を作っているところは、みんな同じだと思います。
手間暇かかっている、そのことに価値を認めてもらえるようにしていきたいです。

事業所名 創作工房 中野竹藝


所在地 鳥取県倉吉市東仲町2573


担当者 中野 喜美子


連絡先 0858-23-7500