福羅酒造は創業が明治22年(1889年)です。湯梨浜町には酒蔵がいくつかありましたが、今では当社だけです。
東郷池にほど近く、山も日本海も近くにあります。背に中国山地、正面には東郷池と日本海が広がる、山紫水明な非常に恵まれた環境、地域だと思います。
もともと酒造りをしていたわけですが、お酒はアルコール飲料なので、苦手な人や未成年の方は飲むことができません。
そこで日本酒の魅力がもっと伝えられないかと考え、以前から作っていた麹の甘酒を工夫するところから始めました。ノンアルコールで健康面でのイメージも良く、それを知ってもらうことで興味を持ってもらいたいと考えました。
普通の甘酒では多くの商品と差別化できないと思い、地元の名産でもある野花梅(のきょううめ)を入れています。ただ甘いだけではなく、後味もさっぱりして飲みやすく、通常の甘酒とは違う味わいが楽しめます。
野花梅はこの地域から見つかった品種です。もともと掛け合わせらしく、杏子(あんず)が入っているそうです。特徴なのが「粒が大きい」こと。熟れてくると本当の果物みたいな、梅とは思えないような香りがしてきます。粒の大きさと香り、それが特徴的な梅です。
「野花梅甘酒」は、梅の香りはないのですが、梅独特の酸味があり、後味がさっぱりしています。また、梅の酸味が商品の品質を維持してくれる利点もあります。
福羅社長いわく「甘酒と野花梅の、組合わせ可能性は無限大です」
通常、甘酒はビンや缶が多いのですが、ビンは重たくなりますので、最初からビンでは作らない方向で考え、キャップ付きビニールボトルで製造しました。
湯梨浜町は、いまウォーキングリゾートという「東郷湖周“げんきウォーキング”プロジェクト」に力を入れています。歩きながらでも食べられるこの形がピッタリで、すぐキャップもできますし、持ち運びできる形が最適なのです。ウォーキングで疲れた体に、梅干しのクエン酸が疲労回復にもいいのではないかと考えています。
最初はアルコールが苦手な方、未成年の方に日本酒の良さといいますか、日本酒に関心を持ってもらいたいというのが目的でした。ところが、その過程で伝えたいものに少し変化があったのです。それが「麹」です。
麹は、日本の発酵食品の中でとても重要な素材、なくてはならないものです。野花梅甘酒は「米麹100%」で作ることに、こだわっています。通常、甘酒はご飯と麹を一緒に混ぜて作るのが一般的ですが、米麹100%で、これだけの甘い甘酒を作っています。
歩きながら手軽に栄養チャージできる「野花梅甘酒」と、ちょっぴり大人の味「酒粕アイス」
次に、「酒粕アイス」です。名前どおり、酒粕を使ったアイスです。
これはもう「大人のアイスを作る!」というコンセプトで生まれました。普通はお子さんが食べやすいようにと考えて酒粕の量を調整するのですが、目一杯、酒粕を使って「しっかり酒粕を感じる、お酒好きのアイス」に仕上げています。アルコールを含んでいるので、お子さんは食べられないです。ごめんなさい(笑)。
この「大人が食べられるアイス」も、お酒にもっと興味を持ってもらいたいと思い、作りました。
すべてのスタートは「日本酒離れが進んでいる」「消費量が減っている」、そういうところからお酒に興味を持ってもらいたいというのが、一番の目的です。そういった意味でも、甘酒だったりアイスだったり、多様なかたちで触れる機会を増やしていきたいです。
お酒から、発酵食品の歴史を伝えていきたい
酒粕アイスは、“おとなの味”
麹や酒粕を使って、商品としての日本酒を伝えたいというのもあるのですが、発酵食品という食文化は、日本固有といいますか、特徴的な発酵食品文化がありますので、そういうこともあわせて伝えていきたい思いがあります。
当初は、お酒よりも「野花梅甘酒」「酒粕アイス」をメインで売っていこうと考えた時期もありました。今は、麹そのものの良さを知ってもらうってこと、そして日本酒とワインの発酵形式の違い、麹についてもっと理解を深めていきたいです。
日本酒、麹、そういった発酵食品全般の歴史も含めて、奥の深い食文化を伝えていければいいですね。
とっとり中部発信プロジェクト
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