「誠実な食品」の追求

(有)鶴乃觜

鳥取県の食べ物をテーマにしようということで、食品作りを勉強させてもらうために勉強会に参加しました。
菌興椎茸協同組合さんと一緒に「どんなきのこなのか」「どのようにして作ったのか」を把握した上でて、食材を選んで作っています。

鳥取県にあるきのこの研究機関(財)日本きのこセンターが保存管理し研究開発をするきのこ類は里山で暮らす生産者に提供され、研究者が現地に入ってサポートすることで良質のきのこが生産されています。きめ細かく管理され分類されたきのことよい食品の条件を守り作られた調味料を原材料とし、化学調味料に依存せず技術との調和による美味しさをもとめて作るきのこ製品です。しいたけは鳥取県の山中で原木栽培され、やなぎまつたけは鳥取・岡山両県産杉のおが屑と、鳥取県産の米糠、奈良県産のふすまを培地に、生産者の健康を考えて無胞子化した品種を太陽光発電で温度管理をして生産されています。これらのキノコを、北海道産細切り昆布を使い、厳選した調味料で煮含めてやさしい味に仕上げています。

勉強を始めたきっかけは「美味しいものを食べたい」というのが一番です。単純に「美味しいとは何なのか」を知りたかったのです。
「良い」「悪い」の基準をどこにおくか、それぞれの会社でバラバラなんです。よく売れるのが良い食品だというところもあります。
流通業では、商品のラインナップの2〜3割の商品群が8割くらいの売上をあげています。売れないものは売れない、すると売れないものは外され、新しく売れそうなものと入れ替わります。
そうした競争の激しい流通の現場では、売れるものを指して「良い商品」と言われるんです。しかし私たちが扱っている食品というものは、嗜好のこともありますし、地域性もあります。

いろんなことがありますが「守っていかなければならないこと」「新しく対応していかなければならないこと」「どうやって守っていくのか、守っていく必要があるのか」を、きちんと学びたいと思いスタートしました。

評価のある優れた食品だと言われるところを訪ねてみたり、いろいろと回っている中、講演会で「食べ物作りの現場」という話をされた方がいました。
いろんな現場を見て知っているし、作ってる人も知っている。けれども本当に大切なのは、私たちが食べる物と『真摯に向き合っていること』。そういうことを大事にしなければいけないんじゃないか、というお話でした。
もう少し深く話を聞きたいと、後日その方を訪ねました。その折いくつかのメーカーさんを紹介していただき、そういったところを回っているうちに、「一緒に勉強しようよ」と声をかけて下さいました。

「品質」というもの、「どうやって原料を選ぶのか」という話をしている時、ある方の名前が皆さんの中から挙がり、後日その方から話を聞く機会がありました。
その頃、食品作りはあまりやっていなかったのですが、いろいろと勉強しているときに「自分で作ればいい」と言われたんです。
食品作りの世界に浸ってしまった人はダメ、業界の常識があり、それに染まってしまっている。
「何も知らないところがいいんだよ」と言われたんです。
研修の席でメーカーの皆さんから「みんなが教えてあげるよ」と背中を押され、スタートしました。
思った通り、非常に素晴らしい方たちでした。

その先生は食べ物を総合科学としてあらゆる角度から見つめて教授され、具体的な事例を挙げていい面と悪い面の両方を洗いざらい話されます。
その中でどう判断するか、どういう判断基準を私たちは持たなければいけないのか、というお話でした。
その中でよい食品の4つの条件を言われたんです。

まず、安全で安心して食べられるあること。その「安全」について、本が一冊書けるくらいの内容がありました。
言葉だけの「安全である」ではなく、安全とは一体なんなのか、食品衛生の立場からなど科学的な見地での安全性を突き詰めるんです。一方「安心」は消費者の問題となります。

次に、ごまかしのないこと。「ごまかし」といっても、いろんなごまかしがあります。
味覚や視覚、材料から作り方、さらに安全、安心、値段などいろんなごまかしがあります。
それらを含めて、一切ごまかししないことが条件です。これが一番重要な条件です。

それから、味がいいことです。
これは「普遍的な美味しさ」というものがあるということです。
嗜好や慣れもあるのですが、例えば海外の方で日本の食品を食べたことのない人に「どちらが美味しいと思いますか」と聞いた時に、「こっちが美味しい」とハッキリわかる美味しさというものがあります。

そして最後が「不当に高い値段を付けるのは食品として失格」ということです。
食品は食べ物と違って流通するものです。
流通するものである限りは、品質に応じた妥当な価格であることは大切です。

この商品にも椎茸を使っていますが、椎茸と言ってもピンからキリまであります。
価格でいえば10倍、20倍というくらい原料の価格が違っていて、儲けだけを考えるなら、安いもの使って高く売れるのが一番いいとなってしまうんです。

私たち日常食べているものには、1,000種類をはるかに超える添加物が使われています。
皆さん「食べてないですよ」と言われるんですが、朝食のサラダやサンドイッチ、コーヒーだけでも驚くほどの種類が使われています。
でも、これを自分の子どもに食べさせたいとは思っていないんです。
そういったことを考えた時に「売れるか売れないかじゃなくて、まず食べ物としてきちんと作る、それをいかに伝えるか」そこが私の店のスタートです。
毎日私が見るために、理念を書いて店に貼っています。

伝統、伝統と簡単にひとくくりで言いますが、例えば、今年どれくらいの食品が開発されて発表されて、全国のお店に並んだのでしょう。
お菓子だけとっても数えきれないほど出ています。
では、これが50年後に何種類残っているでしょうか?
つまりしっかりとした特徴を持ち飽きられないで続けられているということ、よい食品の4条件を守り食べ物として確立されていることが、伝統という意味なんです。
鳥取県では二十世紀梨が作られていて、二十世紀梨に代わるものとして毎年いろんな梨でていますが、やっぱり二十世紀梨は残っています。
「なぜだろう」「その良さとは何だろう」そういうものの勉強を日々続けています。

いいものは「味がいい」「飽きがこない」、往々にして言われるのが「後口(あとくち)」がものすごくいいんです。
しかし、まず売ろうと思ったらダメなんです。
売れるか売れないかは、口に入れた瞬間の3秒で決まると言われます、「ああ、これだ」って。
口に入れた時の「これ美味しい」というインパクトのある味は、いわゆる添加物でできる味が多いんです。
色も濃いし香りも強いのは、着色料や香料などがいろいろと使われているためです。
口に入れた時のインパクトが強くなければ売れないので、売ろうと思えば添加物が増えてしまうんです。
けれども、本当にいいものは後口がよくて、2歳くらいまでの子どもさんは気にせずに食べるのですが、3〜5歳くらいになるとスナック菓子を食べる機会に慣れてきてしまうので、おとなしい味では物足りなくなってしまことも多いうんです。そして慣れた味を美味しいと感じるようにさえなってしまうんです。

いまの日本は何でも手に入るので、欲求を満たすのに目を皿にしてもっと美味しいものがないかと探し回らなければいけません。
しかし、今から100年くらい前はそうじゃなかった。
私たちの子どもの頃では、舶来物という言葉があって「舶来品は高級品」でした。
今は、メイドインジャパンがもてはやされるようになり、そういう意識も変わってしまいました。

食べ物は比べるものじゃなくて、味わうものなんです。
例えば、砂糖は広い意味でいうと甘味料です。
人間が生きていくために必要なものでもありますし、味覚を作るうえで大事なものでもあります。
北ヨーロッパの人はてんさい糖を、地中海地方の人は昔から蜂蜜、中米の人はサボテンから作られるアガベシロップを、シベリアやカナダの人たちはサトウカエデという木の樹液を煮詰めてメイプルシロップを作ります。
それを今の日本人の多くはメイプルシロップと飴のどちらがいいのか、サトウキビとてんさい糖では?という見方をします。
てんさい糖も蜂蜜もメイプルシロップも、私たち人類にとっては「そこで生きてきた」っていう証なんです。大切なのは比べることではなくそれぞれの中に良し悪しがあり、それを見分けることです。 その場所でとれたものを、どうしたらもっと美味しく食べられるか、どうしたらそれをもっと潤沢に作れるようになるのか、ずっと絶えることなく考えて考えて改良しながら、使い続けて今があります。 その甘味料を使った食べ物は、長い歴史の中で美味しく仕上がるように工夫されて、その土地の料理には一番それが合うように出来上がっています。

山陰の食べ物、郷土の食べ物とは?というところまで考えて商品作り、原材料選びをしています。 「わたしたちがやっているのは、食べ物なんです」ということを心がけています。

山陰地方に住む私たちと風土が作り上げたよい食品を味わっていただきたいと願っています。そこに普遍性を持つ美味しさが加わった時に新しく伝統食品が生まれるんです。

お店は平成5年にはじめて25年目になりますが、とにかくお店はシンプルにして、商品はきちんとするようにしています。
私たちにとっての豊かさというのは、いいものがたくさんあることなんです。
よさに順番があるのではなくて、どちらもいいものだけど、こんな違いがあるよと知ると選べます。
選べるというのは、豊かさなんです。
個性があり、きちんと食べ物としての条件を備えているものがいくつかあれば、自分の好みや体の具合によっては控えなければいけないときにもちゃんと選べるものがある、つまり豊かさなんです。

今は広告が多いので、情報が多くなると人は迷ってしまいます。
メーカーは研究していますから、消費者が何に高い関心を持つのかを知っています。ときには賢い消費者ほどねらわれることにもなります。
多くの商品から、いいものを選ぶ目を持つことはとても大事です。

「とりそらたかく」が始まった時、鳥取県中部のものを全国に売れるようにしたいという話が出た時に「鳥取県中部でできるものをいいものにしていこう」と考えました。

始めからいいものもありますが「もっとよくならないかな」という姿勢で、毎日携わっていくってことが大事だと思います。

いろいろ集まって「ここはこうした方がいいよ」「こうじゃないといけないよ」「これを使った方がいいんじゃない?」というように、切磋琢磨の中で交わって向上していった結果、鳥取県の中部にいいものがたくさんあると感じてもらえるのがブランディングだと思います。

今あるものが、もっともっとよくなっていける、そういうところまで高めていきたいです。

企業名 有限会社鶴乃觜


所在地 鳥取県倉吉市堺町3-100


担当者 代表取締役 井上 裕貴


連絡先 0858-23-5161