祖母の代から変わらない、伝統の味

有限会社谷本工業 あじくら本舗

谷本工業は元々建設業の会社でしたが、「あじくら本舗」として平成23年食品製造・販売をはじめました。
味噌の加工食品として「とっとりの金山寺味噌」を作っていますが、元々は私の母親、祖母が作っていた金山寺味噌を引き継いだものです。
昔はどの家庭でもよく作られていて「さい味噌」と言っていました。発祥は和歌山県だと言われています。

各家庭や地域によって、使う食材が違うなど個性があります。
一般的な金山寺味噌は甘いものが多い印象ですが、倉吉の「金山寺味噌」は醤油ベースの少し濃いめの醤油味です。 甘くない金山寺味噌が、この辺では多かったのではないかと思います。

母親が作っていた金山寺味噌は、近所の方におすそ分けしていたのですが「美味しい」と評判でした。 私も小さな頃から食べていて、少し辛いけど美味しかった記憶があります。
懐かしい味というか、お年寄りの方からすれば「懐かしい」「ああ、昔食べたなあ」言われる人も多いです。
そのうち「また食べたい」という声を聞くようになり、皆さんに食べてもらえるように商品化しました。


「とっとりの金山寺味噌」はシソの実としょうがを入れていて、食感や口の中に広がる香りが特徴です。
最初の頃はシソの実も全て、自分のところで作っていました。 親戚やアルバイトの方に手伝ってもらい、シソの実を採ってそれを塩漬けにして保存、徐々に味噌に入れていました。
本当に手間がかかることがいっぱいで、寝る時間もなかったくらいでしたが、うちの金山寺味噌はシソの実が入らないと美味しくないんです。
そんなに売れるわけでもないので間に合っていましたが、今では作るペースが早く、量も増えて、もう無理だと思いやめました。

けっこう具だくさんで唐辛子も入れていますので、見ためも少し赤かったりします。
うちの家族は辛いのが好きでしたので、家庭の味付けをそのまま再現しています。

味噌は発酵食品なので日持ちします。これを冷蔵庫に入れて常備しておくと、味も変わっていきます。 冷蔵庫の中は温度が低いため、発酵がゆっくり進みます。味に少し深みが出て、最初の頃よりはコクがでてきます。
麹は生きていますので、夏と冬でその管理も全く違います。発行の進み具合で味も変化するので、経験と勘で調整しています。


「とっとりの金山寺味噌」をより多くの人に食べてもらいたいと思い、ラーメンに金山寺味噌をブレンドしようと考えました。
金山寺味噌を知ってもらう、売るためにラーメン屋を開店したのですが、ラーメンは一度も作ったことがなく、料理の専門家の方にスープの取り方から教えてもらいました。
スープに金山寺味噌をブレンドしていて、食べるときにこの金山寺味噌をトッピングして食べることができます。
唐揚げにもこの金山寺味噌をペーストにしたものに鶏肉を漬け込んでいます。
金山寺味噌を食べてもらえる、知ってもらえる、買ってもらえる。お店はすべての出発点です。 試食の場にもなっていて、ラーメンに合わせる食べ方は全国でも珍しいと思います。

金山寺味噌は本当に広がりのある食品だと思います。これに茗荷やイカを入れたり、入れる食材でイタリアンにもなるし、和風、中華風にもなります。 いろんなバリエーションを試してみたいです。

もともとは建設業からはじまっているので、加工食品を含めてその飲食には関わったことがなかったんです。
食品加工、飲食店に関わることでいろんな方と知り合うことができました。 いろいろと勉強させてもらい、ラーメンのこと、料理のことも少しずつ覚えて、みなさんに提供できてすごく嬉しいです。

でも、本当に苦労したことがたくさんありました。うちの金山寺味噌は独特の工程があり、誰もその味を再現できなかったのです。
全くやったことのない分野ですし、商品として思うようにいかない時ばかりで、挫折しそうになりました。

うちの母が平成27年頃に亡くなったのですが、金山寺味噌は母だけが作り方を知っていました。 私は母がやってくれるからと一切関わっていなかったのです。
ところが、ある日突然、母は病に倒れてしまい、母から私に受け継がなくてはいけなくなりました。 病院へ通って作り方を聞いたのですが、正直それが一番つらかったです。
病気のことを母に知られたくなかったのですが、母は作ることができない体でした。 商品を作るために分量やレシピは教えてもらいましたが、肝心な長年の勘やコツ、そういったところを聞く必要があり、それを聞き出す時がすごくつらかったです。
それでも「作らなくてはいけない」という思いがあり、母が残してくれたものをこれからも残さなければいけないと考えたのです。

今は私しかレシピを知らないので、作れるのは私だけです。
将来、子供たちに継ぐかどうかはわかりませんが、誰かに引き継いでもらいたいと思っています。 母との思い出は、辛いこともありましたが「伝えてもらってよかった」と思っています。今でも私の中での宝物です。

いま進めているのは、金山寺味噌を使ったスイーツです。
日常で食べるといっても食卓に上がるものなので、もっと気楽に食べられるものがいいなと考えました。 自分たちではできない部分も多いので、主人のお友達にパティシエの方がいて協力をお願いしています。 試食した時にすごく美味しくて、金山寺味噌はそんな使い方もできるのだと、少しビックリしました。

金山寺味噌の香りがして、金山寺味噌が入っているんだと分かります。
ギフト用に金山寺味噌を出していますが、今後はパウンドケーキや焼き菓子の詰め合わせなど、いろんな方に食べてもらえる機会を増やしたいです。
「とりそらたかく」のラインナップも、今のところ「とっとりの金山寺味噌」だけですので、スイーツを追加していきたいです。

会社名 有限会社谷本工業 あじくら本舗


所在地 鳥取県倉吉市上米積1101-5


担当者 総務部 浅田 和佳


連絡先 0858-28-3334