山の恵みを、余すことなくいただく

日本猪牧場

元々、父親である先代が「鳥取猪牧場」としてスタートしました。 実はこの辺りに猪はいなくて、先代は猪の飼育・繁殖からはじめました。文字どおり「猪牧場」です。
それを引き継ぎ、事業を進めていく中で商工会の専門家と相談した結果、「もっと大きな印象を与える名前」ということで、「日本猪牧場」に変えました。 「本当にいい猪で、いい猪を作り、いい猪だけを扱う」そんな思いが全国に広まればと考えています。

ここは父親である先代がはじめた場所であり、倉吉市と北栄町の境目、東西に長い鳥取県のほぼ中心にあたります。
民間の食肉加工施設として、県東部から西部まで対応するには、交通の便においても最適です。
また北栄町や倉吉市、琴浦町からも奥地になるので、猪には過ごしやすい環境で飼育・繁殖に適しています。

先代は猟師をやっていて、鳥取県の猪肉は、有名な丹波篠山と比べても遜色ないと感じ「鳥取県の猪肉は美味しいし、商品になる」と信じていました。
当時の北栄町(旧大栄町)は大栄スイカが名産でしたが「これから先、長く続かないのでは?」と考え、スイカに代わる産業として猪肉に注目しました。
あれから30年以上が経ち、北栄町では重量のあるスイカ栽培から、軽量作物(らっきょうやトマトなど)の栽培へ変わりつつあります。
地域の高齢化が進み、先代の考えていた懸念が現実になりつつあります。 

私自身も大変驚いた記憶がありますが、飼育した猪肉と山(野生)の猪肉では全く味が違いました。
猪肉はエサと成育環境によって変わるため、今までの猪肉は品質が安定していませんでした。 肉質が硬い・柔らかい、脂肪が多い・少ないなど、“ばらつき” が多い肉は商品になりません。
「この前の猪肉はニオイがなかったのに、これは臭い」とか、「今日の猪肉は硬いなあ」というのも、品質の “ばらつき” から起こるものです。

食肉として猪肉を考えた場合、飼育した猪の方が品質が高いと考えています。
猪を飼育・繁殖する技術を先代から引き継ぎ、最近では全国から指導を仰ぎたいという問い合わせがきます。 ジビエが流行っていますが、昔から猪を飼育していた私たちからすると「ジビエ」という感覚は少し違うと戸惑っています。
しかし猪肉を美味しいと感じてもらえるのであれば、ジビエに注目が集まるのは大歓迎です。

「とりそらたかく」には、猪肉を使ったウインナーを出品しています。
猪肉のウインナーは珍しくないのですが、その多くは添加物が入っています。 添加物を入れる必要はないはずですが、「入れるのが当たり前」という風潮があったりします。
その中で猪肉100%にこだわった、猪肉ウインナーを作りました。 他にも味噌漬けやコンフィ、スモークハムなども作っていて、食べていただいた方には、美味しいと好評いただいています。
しかし価格が少々高めなので、品質の確保と加工にかかる費用、在庫リスクなどのバランスが今後の課題だと考えています。

猪肉ウインナーは無添加の猪肉100%にこだわっています。 使用する猪肉の品質も徹底していて、本当に美味しい猪肉を味わってほしいとの思いからです。
最近はフレンチやイタリアンなど、女性受けしそうな料理が目立ちますが、楽しみ方は自由です。 炒め物や焼肉、カレーやシチューなどの煮込み料理、鍋物や煮物でも美味しく食べられます。
ウインナーではありませんが、スライスした猪肉は牛肉や豚肉と同じように調理できます。

ウインナーなどの加工品は冷凍して出荷していますが、基本的にチルド(冷蔵)出荷にこだわっています。
飲食店の方からも、冷凍だと味が落ちるので生肉で仕入れた方が美味しいと聞きます。

猪は体重もあり、屈強で強いイメージが先行していますが、実は弱いんです。
あまり知られていませんが、非常にデリケートで環境の変化に敏感です。 臆病な性格とでも言いますか、プレッシャーに弱い動物なので、飼育・繁殖は簡単ではありません。
全国的に猪肉に注目が集まる中、食肉としての猪肉を考えた場合、飼育・繁殖が理想だと考える理由がいくつかあります。

魚の養殖は年々技術が向上し、天然物より美味しい場合もあります。
美味しいと評価されている、ブランド牛や豚・鶏肉などは、品種改良やエサの配合によって生まれたものです。
つまり人の管理によって、衛生上の問題もクリアされ、品質が一定になる。猪肉についても同様の考え方だと思っています。;

また、山(野生)の猪は、昔のように安全な食肉ではなくなりつつあります。
うちの加工場でも年間800〜900頭の猪を処理していますが、廃棄しなければならない猪が年々増えています。 処理していく過程で、色や形がおかしい、病気による衛生上の問題など、食肉としての品質が確保できないものは廃棄しています。
そういった野生の猪が増えているのですが、昔と違うのは猪のエサです。
人間の生活圏と山が近くなったことで、人が猪に餌付けしてしまい、味を覚えた猪は残飯を漁って食べるようになります。 結果、猪はなんでも食べる雑食性になり、食肉としての味は当然落ちます。また病気にかかりやすくなるため、食肉にはなりません。 内臓に奇形があったり、変色していたりするので、猪がエサに対してストレスを感じているのでしょう。 この話は全国的なものと考えられています。

豚と交配してしまった猪が、山へ出ていくことも問題です。 こういった猪は豚の病気を持っていることがあり、その病気が野放しの状態で広がっていく。結果、家畜へ感染が広がります。
以前であれば猟師が猪を処理していることが多くありましたが、安全・衛生管理のことを考えれば、「適正な品質検査」と「猪の飼育・繁殖」が最善だと思っています。

猪の飼育・繁殖が最善だと思う理由がまだあります。 それはウリ坊と呼ばれる猪の子どもです。
罠猟でまれに小さな猪もかかりますが、山へ放つことはできないまま、食肉にもならず処分されてしまいます。
山へ放つことはできませんが、飼育・繁殖することはできます。
「この小さな命を無駄にしたくない」という思いも、「猪牧場」につながっています。 最終的には食肉として命を絶つことになりますが、価値のある命として「美味しい猪肉」にすることが、私たちの使命だと考えています。

日本猪牧場として知識・技術の蓄積が多くありますが、規模は決して大きくありません。
大きくするためには費用もかかりますし、猪が逃げたりすると、周辺住民に迷惑もかけてしまいます。
多くの猪を飼うのは猟師でも「無理だ」と言われますが、うちでは実践できています。 このノウハウを全国に広げていきたい、というのが1つの夢です。

牧場のあり方として、三重県にある「伊賀の里モクモク手づくりファーム」の取り組みを目標にしています。
そこでは豚を飼育しているのですが、飲食・加工・体験型・施設見学、宿泊など、全てを提供しています。 全てを実践することは難しいのですが、猪肉の品質・安定を追求していく中で、いろんな価値を提供していきたいと考えています。

猪肉としては高評価をいただいていて、リピーターの方や定期的に納入している飲食店もあります。
美味しくない猪肉を提供することは、信用と継続性に大きく影響します。
全国に多くの食肉処理施設がありますが、その9割以上が赤字で、それを解消するために辿りつく先は「肉の品質」だと思います。 いくら大量に出荷できても、品質が低いままだと流通量が増えません。
「安心して食べられる、美味しい猪肉」を提供していくことで、信用=ブランドができあがるのだと思います。
人が食べて美味しいと感じる猪肉を、高い品質で安定して提供していく、それが今の目標です。

また高い品質を維持できる、人材の育成も大切です。
処理する人が変わると、肉の味が変わるのでは、品質が一定とは言えません。それは今後の課題です。

先代が描いた「猪牧場」は、まだ成長途中の段階です。
私自身も日々勉強中ですので、もっと美味しい猪肉が提供できると思います。

会社名 日本猪牧場


所在地 鳥取県東伯郡北栄町東高尾375


担当者 代表 徳岡 憲一


連絡先 0858-29-7729