暮らしを彩る組子

福田建具店

福田建具店は昭和10年頃に、私の祖父が創業しました。 およそ80年前になります。

昔は建具屋さんも多くあり、当然アルミサッシなどもない時代でしたので、戸を作るにも手作業で、機械があっても今みたいな量産できるものはありませんでした。 多い時には、倉吉に最高で100軒以上の建具屋さんがあったと聞いています。 市町村合併する前の倉吉市の頃に100軒以上ですから、かなりの数がありました。 今は10軒もないと思います。といっても、建具組合という全国組織で鳥取県にもありますが、その組織に入ってない方もおられるので正確な数はわかりません。

行灯は時代劇などでしか見る機会がないかもしれませんが、建具の仕事というのは洋風も和風も、オーダーさえあればできるわけです。
家具のように既製品も増えていて、基本は家屋に合わせた建具を作りますが、最近はだんだんと少なくなってきています。 「組子行灯」は技術的にできることを表現したもので、比較的手に取りやすい商品にしています。
デザインは「三ツ組手(みつくで)」という技術を使っていて、正三角形を6つ組み合わせた正六角形をデザインのベースにしています。 江戸時代から建具や着物の柄にも使われている、麻の葉のデザインです。

組子は鉋(かんな)が発明されたことで生まれました。
鉋は昔からあったわけではなく、江戸時代に発明されたものらしいです。 昔は釿(ちょうな:手斧)のような工具で、削り取るようなものしかありませんでした。もしくは小さな小刀のようなものを使っていたそうです。 鉋が発明されたことで正確に平たく削ることができるようになり、この細かい組子が生まれました。 素晴らしい道具が生まれても、需要がなければ作られなくなってしまいます。
細工物する職人はもともと少ないのですが、後継者不足など様々な問題もあり、どんどん減っています。

組子を作ろうと思ったきっかけは、建具組合が開催する全国大会への出展でした。
全国大会が毎年開催されるのですが、そこで非常に刺激されました。 サイズも大きく内容もすごく凝縮された作品が多くあります。 しかも大きいだけでなく、非常に高い技術が使われていて圧倒されました。この全国大会は5年前に鳥取でも開催されました。

組子行灯を作る時もそうですが、材木にもいろんな種類があって「使いやすい」とか「見栄えがいい」など材木によって変わってきます。 一般的には杉や檜が多いですし、県中部でも杉、檜です。 建具に使う木というのは、すごく内容がいい木なんです。
最近は外国産の木が多くなり、障子などにも使われています。 外国産の木は価格が比較的安いこともありますが、すごい大木なんです。直径が1m以上あって、高さも12〜18mになるような木です。 その木はとても目が細かくて強度もあり、湿気や経年による狂いが少なくて、すばらしい木です。 そのような木は、日本では使い切ってしまい、とっくの昔になくなってしまいました。

建具に使う材木は、目の細かいものでなければいけません。目の粗い材木だと狂いが出やすく、戸の開け閉めができなくなります。 構造材でいえば「垂木」とか「根太」と呼ばれる木がありますが、そういったものは強度が優先で多少は狂っても支障ありません。 しかし、建具は狂ってしまうと開け閉めができなくなるので、大問題です。

狂いの少ない材木として、わかりやすいのは楽器です。 隠れていて見えませんが、ピアノには響板という音の響きを作る部分があります。 その「響板」という板の前にピアノ線があり、鍵盤を叩くとピアノ線が響いてその板が響く、板が音を作っています。 つまり、響板が湿気や経年によって狂ってしまうと、音が変わってしまうんです。 バイオリンやギターなど、材木の中でも一番いいところが楽器に使われています。 日本でいえば、能舞台などに使われている檜です。檜は音がいいから使われているんですね。 能舞台でいうと、音がぴーんと通るように、板が縦向きに張ってあります。 効率だけでいえば、外国のステージのように横向きに張った方が都合がいいはずです。

日本人は細かいところに配慮する文化があり、建具にもそういった配慮のために家全体を知っている建具屋さんが多くいます。

「組子行灯」は、使っている材木の魅力や日本の伝統柄のデザインを詰め込んでいるのが特徴です。
ここに青谷の和紙を使っていて、和紙を通して見える光と組子越しに見える光で、面によって変化を加えています。
行灯ひとつとっても奥が深く、いろんな形・色があります。 最低限の組子行灯だと、枠だけで組んで和紙が張ってあるだけのものもありますし、上に持ち手がついていたり、場所によっては朱の漆が塗ってあるデザインもあります。

「組子行灯」に漆などは塗っていませんが、胡桃油を塗っています。 塗料ではなく食品用の油で、この油は乾性油といって乾くとさらっとする油です。 オリーブオイルなど普通の油、特に機械用の油などは、いつまでもベタベタしてゴミがついたりします。 けれど、胡桃油は乾くとさらっとするので、オリーブオイルのようにフライパンで使うと、サァーっとなくなってしまいます。 普通の塗料、特に石油系の塗料は使いたくないんです。
石油系を使うと、熱を加えた時に白い染みができるのですが、それは汚れではなく、塗料が熱変性してしまうんです。
一度、熱変性してしまうと汚れではないので絶対にとれません。 長く使ってもらうためにも、石油系の塗料は使いません。

建具屋とお客さんが、直接つながる機会は少ないです。 建設会社や建築会社がお客さんとの窓口になるので、新築の場合でも「建具屋さんに直接頼む」というお客さんはいません。
知人がいても、住宅全体を見てもらうために建設会社や建築会社に頼むのが一般的で、そこからの依頼で建具屋の職人が関わる形です。
そういう意味でも、「組子行灯」に関心を持ってもらい、直接お話しができる機会は貴重なわけです。
組子行灯以外にも、コースターや鍋敷きなども作っていて、この鍋敷きは特に人気があります。
木のよさもわかりますし、ホームセンターなどに行ってもありきたりな商品が多く、木製の鍋敷きは少ないです。
最近は木板の鍋敷きも見かけるようになりましたが、材料や製法も海外で作った簡素な印象です。
若い人にも受けが良く、シリコン製のものもありますが、木製の方が雰囲気や温かみがあると評判です。

「とりそらたかく」の商品は食品が多く、その中でも「組子行灯」は価格の高い商品です。
商品全体の価格帯から考えて、もっと手に取りやすいものの方がよかったかも、と考えたりします。
気軽に買える価格で食品と関係性がある、鍋敷きやコースターの方が選びやすいかもしれません。
建具の良さを知ってもらうための「組子行灯」ですが、特殊なものじゃないと面白くないと思い、三ツ組手のデザインにしています。
デザインや細工など、凝ったものにすると価格が高くなってしまうので、痛しかゆしです。

近々の目標としては、火災で失った職場の環境をしっかり作っていきたいということです。
材料や機械、今は材料も少しずつ仕入れましたが、充分ではないです。
もともと使っていた機械も、コンピュータである程度制御できていて、同じピッチで切ることができましたが、手動でやると微妙に違ってきます。
微妙に違うこともありますが、時間がかかり過ぎて価格にも影響してしまいます。
知人に声をかけていただいたり、助けてくれる同業者の方もいらっしゃいますので、なんとか頑張れています。
徐々に、いい出会いなどを通して、環境を整えていくことが一番の目標です。

無双窓(木造換気口)の作り直し

事業所名 福田建具店


所在地 鳥取県倉吉市福光227-6


担当者 福田優


連絡先 0858-28-1418